ワクチン豆知識のリスト



B型肝炎


B型肝炎ウィルスの感染により、20∼30%が急性肝炎を発症し、その1%程度が劇症化します。慢性化した場合、肝硬変・肝臓癌へと進行することがあります。年齢が若いほど慢性化しやすい傾向にあります。B型肝炎の予防接種は2016年10月1日より定期接種となりました。但し、2016年4月1日生まれ以降の方が対象となります。

感染経路は、医療事故・性感染症・母子垂直感染と云われてきましたが、ウィルスは涙、唾液、汗などからも排出されるため、感染経路が不明な水平感染もあります。海外からより慢性化しやすいゲノタイプが流入してきているのも事実です。

海外渡航時に必要なワクチンの一つですが、国内にいても必要なワクチンであると思われます。


不活化ポリオ


わが国で1950年代後半から1960年にかけてポリオの大流行があり、1961年に急遽、経口生ワクチンが導入され、以後ほとんど発生が見られなくなりました。2014年4月からは、不活化ワクチンに切り替わりました。

ポリオウィルスにはⅠ、Ⅱ、Ⅲ型の3種類があり、経口生ワクチンはⅠ型、Ⅲ型の抗体価が不活化ワクチンに比べ低い傾向にあるといわれていますが、特に1975年∼1977年生まれの日本人の成人のⅠ型ポリオに対する抗体保有率が低いことがわかっています。それぞれ56.8%、37.0%、63.8%です。

ポリオ流行地域だけでなく海外に渡航する場合はこの年代の大人は不活化ワクチンの追加接種をお勧めします。1回の接種でもかなり抗体価は上昇するそうです。2回接種ではほぼ100%の人が有効な抗体を獲得するそうです。(日本人成人に対する不活化ポリオワクチン追加接種の免疫原生 第18回日本ワクチン学会 2014.12.7 福岡)


水痘ワクチン


水痘(水ぼうそう)のワクチン株は1971年、高橋理明先生が日本で水痘の患者さんから分離し、ワクチンを作成されました。患者さんの名前をとって岡株と名付けたそうです。国内で、ネフローゼ症候群の小児に接種し、その全員に免疫が得られたことがLancetに発表され(1974年)、国内外で大きな反響を呼びました。この岡株水痘ワクチンの安全性や効果が日本から世界へ次々と発表されました(Pediatricsの3篇、1977年)。1979年、NIH, FDA の会議に高橋先生が招待講演をされ、その結果、岡株水痘ワクチンは米国で正式に導入され、世界的なものとなったのです。アメリカ、ヨーロッパ各地で試験接種が行われ、WHOで岡株こそ水痘ワクチンとして望ましい唯一のものであると認められ(1983年)、1984年ヨーロッパ数か国でハイリスク児への接種が認可され、韓国でも同様に認可され(1988年)、1995年にはアメリカで定期接種となったのです。

2004年、高橋先生にお会いする機会があり、私が大学時代に2回も帯状疱疹に罹患したので、帯状疱疹発症予防に岡株水痘ワクチンが効果あるかと質問したところ、「作った僕が言うのだから本当だよ!」と言われました。その時、高橋先生に大変失礼なことを言ってしまったと、いまでも後悔しています。2005年、高齢の成人への岡株水痘ワクチン接種は帯状疱疹の予防に著効すると発表されました(N Engl J Med)。

日本国内では、1981年から実用化のための臨床試験が行われ、ハイリスク児への接種が認可されていますが、欧米のみならず、アジア諸国にも遅れて、やっと2014年10月に定期接種となりました。日本から全世界へと広まった水痘ワクチンを開発された高橋先生は、日本での定期接種が実現される前年の2013年に亡くなりました。